日本酒の「辛口信仰」にもの申す

25 10月 2011

日本酒バーを始めて1年半、様々なお客様のご意見をお聞きしていると、改めて日本酒の
魅力を理解してもらうのは難しいことなんだなと感じています。

まず多いのは、日本酒に対する誤解や偏見です。「悪酔いする」「息が臭くなる」「糖尿病になる」
「添加物が多い」などなど。かつて糖類や調味料などをばんばん添加した三増酒が幅を利かせて
いた頃にこうした悪印象が定着したのでしょう。かくいう私も、学生時代に安酒場でお銚子
1本100円といった怪しげな酒を飲んでひどい二日酔いになったことが何度もあるので、悪評の
理由が分からないでもありません。

しかし今は、純米酒を中心として真面目に丁寧に醸された日本酒が増え、当店で扱っている
お酒もそうしたお酒ばかりです。 ところが、私のように過去のトラウマを抱え込んでいたり、
自分じゃなくても家族に大酒飲みがいて体を壊したりといったトラブルを経験した人たちは、
まず記憶の中の黒いベールをはがすところから始めないと、日本酒を飲む気になれないようです。

ちなみに私の父は、毎日晩酌で1升半を飲み干すほどの飲ん兵衛でしたが、手酌で泰然と飲み続ける
姿に「日本酒ってそんなに美味しいものなんだろうか」と、幼い頃から興味を募らせていました。
それが高じて自分で飲み屋まで始めてしまったのですが(笑)。それはともかく、世界全体で見ても
親父世代が飲んでいた酒を次の世代は飲まない傾向にあるようです。フランスではワインの国内消費が
減少していますし、ドイツのビール、英国のウィスキー、ロシアのウオッカなども同様です。
したがって国内の減少分を輸出で補うしかないと、これらの酒類は積極的に海外への売り込みを
図っているわけです。

最近は日本酒も海外進出が盛んになってきていますが、一方で肝心の日本人に日本酒の魅力を再認識
してもらわなくてはもったいない話です。そこでもう1つ気になるのが日本酒の「辛口信仰」です。
「お酒をおまかせで出して」とリクエストされるお客様に好みを聞くと、7割方が「辛口で」と
答えます。この「辛口」がくせ者なのです。一般的に日本酒の甘辛度は裏ラベルなどに記載
されている「日本酒度」で表します。プラスの数値が大きいほど辛口で、マイナスが大きいほど
甘口になりますが、これはあくまで分析器で計った数値で、人間の舌はそう単純ではありません。

アルコール度数や酸度、アミノ酸など旨味成分の多寡などによっても甘辛の印象は随分変わります。
新潟酒系の「淡麗辛口」をお出しして反応がイマイチのお客様に、一般的にはやや甘口の範疇に入る
お酒を出して「うん、これだよ」と喜んでいただくことも少なくありません。正直なところ当店には
数字的に強い辛口のお酒はあまり置いていません。自分自身が米の旨味をしっかりと引き出した
芳醇な旨口タイプが好きだからです。

ですが、辛口好きとおっしゃるお客様にあえてこうしたお酒を出して「美味しいね」と言われるのは、
やはり冒頭で書いた糖類を添加した甘ダレする昔の日本酒のバッドイメージが つきまとっている
からでしょう。こぼれたお酒で手がベタベタになった経験は多くの方にあるはずです。また、
私の親父世代のように 平気で1升以上飲むような人にとっては、すっきりした辛口酒でないと
途中で飲み飽きますし、料理の味も邪魔してしまいます。このように「辛口信仰」にも日本酒の
過去の亡霊がつきまとっているのではないでしょうか。

先日、九州の40の酒蔵が集まり完全ブラインドによって人気ランキングを付けるイベントに参加して
来ました。トーナメント方式の決勝に残ったお酒はいずれも「芳醇旨口」系ばかり。中でも2位に
入ったお酒は日本酒度がマイナス15度という超甘口でした。これは私の好みというより、140人
近くの参加者が料理を食べながら旨いと思ったお酒に投票する方式だったため、一定の人気傾向を
導き出すことは可能でしょう。

誤解のないようにしていただきたいのは、私は決して辛口酒を否定しているわけではありません。
じっくりと完全発酵させたお酒はしっかりとした米の旨味が感じられる辛口酒になりますし、
軟水・硬水といった仕込み水の違いによる蔵の個性としての辛口酒も好ましいものです。
お燗酒でじっくり料理を楽しみたい時は、きりっとした辛口の方が盃が重なります。

甘辛いずれも日本酒黄金時代と言われる今しか味わえないお酒なのです。だからこそかつての
トラウマを払拭できない方がいるようでしたら、先入観による“飲まず嫌い”を捨てて、まずは
一口味わっていただきたい。これから日本酒がさらに美味しく感じられる季節を迎えるからこその
老婆心をもって、店で皆様をお迎えしたいと思います。

10月1日「日本酒の日」来店サービスあります!

29 9月 2011

☆10月1日(土)は「日本酒の日」。この日と10月2日(日)の2日間、
 来店されたお客様に特別サービスがあります。

☆福島県喜多方市の夢心酒造の東海林社長のご好意により、超限定品の「夢心 大吟醸
 斗瓶採り」を1杯と、蔵元夫人お手製の酒粕漬けをサービスいたします。皆様の
 ご来店をお待ちしています。

9月の営業のお知らせ

30 8月 2011

勝手ながら9月10日(土)から13日(火)まで遅めの夏休みを取らせていただきます。また、4日(日)は
日本酒の会に出席のため17時からの営業となります。

したがいまして9月の店休日は、6日(火)、10日(土)、11日(日)、12日(月)、
13日(火)、20日(火)、26日(月)、27日(火)となります。どうぞ宜しくお願いいたします。

飲食店はネットとどう付き合うのでしょうか

22 8月 2011

以前勤めていた雑誌社を辞める少し前のことですが、「時代は変わったな」と痛感する体験をしました。ある記者会見の会場に赴いたところ、会見場の一番前の“一等地”に「ブロガー様御席」という貼り紙がしてあったのです。そこに集まったブロガーさんたちは皆ノートパソコンを持ち込み、会見の内容をその場で打ち込んでいました。写真も我々のようにカメラマンなど使わず自分で撮影しますから、リアルタイムでページを更新することも可能なわけです。

会見を開いた企業側にとっても、掲載まで時間がかかる既存メディアよりもスピードが段違いに速いうえに、基本的にはその企業や商品などに好意的なブロガーを集めることで、宣伝効果も高いというメリットがあるのでしょう。ネット時代ならではの変化なんだと納得しようとしましたが、何かもやもやした違和感のようなものを覚えました。

私のようにメディアに就職した人間は、新人時代から取材のやり方や文章の書き方などの訓練を受けます。中には取材先との距離の取り方といった言葉では説明しきれない微妙な心構えも叩き込まれます。取材先から無用な便宜供与を受けて癒着するようなことがあっては記者失格と見なされます。だからこそ中立的で客観的な記事が書けますし、時には相手に対して厳しいことも堂々と言えるわけです。

また、自分が書いた記事は少なくとも3〜4人の人間の目を通ってから印刷に回されます。それによって間違いや勘違い、一方的な思い込みは排除されます。もちろん客観性と良識をベースに記事を書かれているブロガーの方がほとんどだと思いますが、何のチェックも受けていない一次情報がそのまま流されることの怖さをぬぐい去ることはできないのです。

今さらこんな昔話を思い出したのは、同業者の方から「ネットで店の悪口を書かれて困っている」とか「ネット検索で来店されるお客から変な誤解や思い込みを押し付けられる」といった声をよく聞くようになったからです。正当な批判や意見なら許容できるものの、たまたま1回だけ来店した際に起こった出来事を針小棒大に書かれたり、店独特のローカルルールといったものに馴染めずに批判されるのが我慢できないというのです。

中にはネット上で電話番号を非公開にしたり、「店内では写真撮影禁止」「ネット掲載お断り」といった実力行使に動いた店もあります。一方では、自前のホームページなどを持たない店にとって貴重なPR手段と好意的に捉える店もありますから、安易にシロクロをつける話ではないのも確かです。当店に関しても多くの方がブログなどで好意的に紹介してくださり、それを見てご来店された方もたくさんいらっしゃいます。

そうした方々には感謝する一方、きちんとしたチェックを経ない有象無象の情報が錯綜するネットの怖さも感じています。例えば、断りもなく撮影されたと思われる料理写真以外に、我々の顔写真までもがネット上で公開されているのを見て、通常の取材ルールを逸脱しているケースが少なくないと思わざるを得ないのです。飲食店は社会的に開かれた空間ですから何を書かれても仕方ないと覚悟はしていますが、少なくとも一言声をかけていただけないものでしょうか。そのうえで聞かせていただく意見や批判は喜んでお受けします。

また、ネットを見て飲食店を探されるお客様には、くれぐれも情報の取捨選択や吟味を忘れないようにしてください。今の自分の立場を忘れてこんな生意気なことをあえて言うのは、自分が店を選んで客になる際に心がけていることでもあるからです。こうしてネットが店とお客の良好な関係を築く媒体になることを信じて付き合っていこうと思っています。

チャリティー日本酒会に参加して思うこと

13 6月 2011

このところ震災を受けた酒蔵を支援するためのチャリティーイベントが目白押しです。
昨日の日曜日も臨時休業をいただいて六本木まで出かけてきました。東北の酒蔵を
中心に90近くの日本酒蔵がブースを並べた会場は壮観でした。一方で全ての蔵元の
お酒を利いて回るのは大変。日本酒の他に焼酎やリキュール、国産ワインなども
出展していましたが、結局回りきれませんでした。

今後もこうしたイベントがいくつか予定されており、できるだけ足を運びたいと思って
いますが、1つ気になるのはこうした試みが被災した蔵だけでなく日本酒業界全体を
活性化させるのかどうかということです。「東北のお酒を応援しよう」というのは
半ばブーム化しており、普段パック酒くらいしか置いていないスーパーにもにわか
東北酒コーナーができるほど。よく見てみると、被害状況にかかわらず東北であれば
何でもありといった品揃えなのですが。

当店でも宮城県や岩手県、福島県をはじめ、青森県、茨城県、栃木県など被害の
大きかった地域のお酒を広く扱っております。そうした地域のお酒を飲んで支援
しようというお客様は多く、最初から最後まで被災地のお酒を飲んでいかれる方も
いらっしゃいます。ところがその一方で他の地域、特に関西以西のお酒の注文が減って
いるのです。

私は関西の大学を卒業し、最初に勤めた会社も関西だったこともあって、当店の
お酒の品揃えもできるだけ関西以西の知られざる銘酒を揃えてきました。その思いに
反して関西の酒が動かない。中国地方の知り合いの酒蔵は「震災前に比べて3割近く
売り上げが減った」と話します。震災を機に普段日本酒を飲まない人が飲むように
なれば業界全体に潤いが回るのでしょうが、今のところ「東高西低」の偏重が
目立ちます。

日本人は極端に流れがちだと批判するよりは、被災蔵を応援したいという純粋な
飲み手の気持ちは大事にしたいものです。ですが、経営が苦しい東北以外の蔵元が
立ち行かなくなるという“二次被害”を防ぐためには、業界全体でこれからの日本酒の
売り方やアピール方法を考えていかないとダメだと思うのです。

昨日の会で原発の風評被害に悩む福島県の蔵元がこう語っていました。
「日本酒は米と水でできていますから、原発の影響を最も受けやすい。今秋の
造りからが本当の正念場です」。被災地の蔵元でも一時的なイベントでは解決
できない長期的で深刻な影響がまだまだ懸念されます。

東も西もない。日本酒がこれから何十年、何百年単位で生き残っていけるのか、
明らかな転換点に立っていることを実感させられます。その場に立ち会っている
自分に何ができるのか、小さな日本酒バーの店主ではありますが、日々自問自答
しています。

1周年記念イベントは大盛況でした!

23 5月 2011

墨田区押上の地に「酒庵酔香」を開いてから1年。5月21日と22日の土日に感謝イベント
「角打ち酔香」を開催しました。座席を取り払い、立ち飲み形式でおまかせ酒肴と
厳選した日本酒を楽しんでいただこうという趣向です。

初日の土曜日は朝からよく晴れて気温もぐんぐん上昇。2人とも汗をかきながら開店準備を
急いでいましたが、ふと外を見てびっくり。1時間前くらいから外の縁台に座って開店を
待つお客の影が…。3時近くになると10人ほどの行列に膨らんだため、慌てて開店を
10分ほど早めました。

開店と同時に普段8席しかない店内は、20人以上のお客でぎっしりすし詰め状態に。
この1年間、危なっかしい店を支えていただいた皆様から口々にお祝いの言葉や品物
などをいただき、感謝の気持ちで胸が詰まりました。その後もひっきりなしにお客が訪れ、
中には入店を待ちきれずにお入りいただけなかった方もいらっしゃいました。
申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、店内の混雑にかまけてろくにご挨拶も
できなかったことをこの場を借りてお詫び申し上げます。

その間も店内は外の気温以上の熱気で包まれ、発泡酒の栓を開ける「ポン!」という
音で一斉に拍手が起こったりなどまさにお祭り状態。チャリティー企画として提供した
「店主の隠し酒」は、開店1時間ほどでほぼ完売。14種類ほど用意したお酒も次々に底を
つき始め、冷や汗をかきました。結局、閉店の夜10時近くまでこの状態が続き、2人とも
くたくたになりながらも普段とは違う立ち飲みのお客との距離の近い交流を楽しみました。

翌日曜日はあいにく昼頃から雨が降り始め、「今日は静かかな…」と高をくくっていたら
これが嬉しい誤算に。土曜日と変わらない混雑ぶりでした。日曜日らしく同業者や
蔵元さんたちのお顔もちらほら。ご近所にお住まいで計3回来ていただいた方も
いらっしゃるなど、結局2日間でのべ100人以上の方にご来店いただきました。

お帰りの際にお配りした「酔香」の焼き印入りどら焼きを用意して下さった常連のお客や、
この日が我々2人の結婚記念日を兼ねているのを知っている方からお花をいただいたりなど、
いろいろお気遣いいただき、感謝、感謝です。改めてこれだけ沢山のお客様に支えられてきた
幸運に、ただただ頭が下がる思いでした。

さすがに2日間の激戦を終えた後は2人とも体のあちこちが悲鳴を上げたため、定休日の
今日は行きつけのマッサージ店で念入りに体をほぐしてもらいました。連休で充分に
リフレッシュし、水曜日から新たな気持ちで2年目の営業に入ります。1年目は半分は
ご祝儀、本当の勝負は2年目以降だと思っていますので、今後も叱咤激励のほど
宜しくお願いいたします。

もうすぐ1周年。幸運なスタートに感謝です。

10 5月 2011

開店記念日の5月21日がもうすぐそこに迫ってきました。1年前のブログに「ヘレンケラーの
ようなスタートです」という文章を書きました。脱サラして始めようとする業種が
生産性の低い飲食業、扱う商品が衰退産業の日本酒、立地は 下町のシャッター商店街、
といった三重苦の環境の中でのスタートを覚悟しての発言でした。

いざ蓋を開けてみると、建設中のスカイツリー見物がブームになって各メディアが一斉に
特集を組み、当店もそのおこぼれにあずかって数多くの取材を受けました。飲酒人口が
減った日本酒も若い女性を中心にファン層がじわじわ増えていく兆しがあり、関東近県や
全国からわざわざ何時間も電車に乗って訪れるお客様もいらっしゃいました。

店の立地は駅から10分近く歩くうえに、夜は人通りが途絶えるシャッター商店街。飲食店を
やるうえでは悪立地の典型みたいな場所に、ご近所の人たちからも「何でこんな場所で
店を始めたの…」と同情交じりの質問をよく受けたものです。しかし「人の行く裏に道あり」
とはよく言ったもので、「こんなに日本酒を揃えている店はこのあたりに今までなかった」
と喜んでいただくようになりました。

さらに、近くにはカレーの「スパイスカフェ」、蕎麦と珈琲の「天真庵」、ワインバーの
「遠藤利三郎商店」などの錚々たる名店が居並び、その端くれに連ねさせていただいたのも
幸運でした。いわば“コバンザメ商法”の恩恵です(笑)。先日の大震災の影響も最小限に
とどまったのも、危なっかしい足取りの店を支えなくてはと思って通っていただいた
ご近所や 常連の方々のお陰です。心より感謝申し上げます。

個人的には「元飲食店経営雑誌の編集長の店」という経歴が「絶対失敗できない」という
見えないプレッシャーになっていたのも確かです。この商店街で失敗したら、自分に続いて
シャッターをこじ開けてこの地で商売を始めようとする人たちの挑戦心をくじくことに
なるなという勝手な使命感も感じていました。十間橋通り商店街が昔日の賑わいを取り戻す
きっかけになるよう、さらに頑張っていきたいと思っています。

生活や意識の面で変わったことを1つ。妻にもよく言われますが、最も変わったのは
金銭感覚です。サラリーマン時代は財布にお金がなくてもクレジットカードを使って
高額品などをばんばん買っていました。毎月の給料を使い切ってもボーナスがあるさ、
という感覚です。ところが今はカードをほんど使わなくなったばかりか、1円でも安い
ものを探して店を巡っています。有給休暇やボーナスなどなく、10円、100円を稼ぐことの
大変さが身に染みたからこその変化です。たまに安居酒屋で飲んでいると妻から
「前は高そうなレストランでごちそうしてくれたのに…」と皮肉を言われるようになり
ましたが(笑)。

そういえばこの1年、自分の身の回りの品物で新たに買ったものは店で着る藍染めの
シャツや下着くらいで、耐久消費財に至っては何も買っていません。それでも何の不満も
感じないのは、お金では買えない多くの財産を得たからです。そうした貴重な財産を
下さった方々に感謝の気持ちを込めて、5月21日(土)、22日(日)の両日に1周年
感謝イベントを 開催いたします。「感謝なのに立ち飲みか…」とお怒りにならず、
是非多くの方に足を運んでいただくことを願っています。

5年間毎月一緒に飲み続けた蔵元がいます

19 4月 2011

日本酒の世界は本当に狭いと思います。と言っても悪い意味ではなく、知り合いと別の
知り合いが飲み友達だったり、共通の飲み仲間がいたり、よく行く店がたまたま同じ
だったり、親しい蔵元が一緒だったり…。店をやっていると毎日がちょっとした驚きの
連続です。

地方の蔵元で東京出没率の最も高いと思われる一人が、福島県喜多方市にある夢心酒造の
東海林伸夫社長でしょう。 現在の迫力ある体躯からはなかなか想像できませんが、
高校時代はジャニーズ系の風貌でサッカーに熱中し、上京して入った大学はおしゃれな
学生が多いことで知られる青山学院大学。これまたおしゃれなスポーツで知られる
ラクロスをたしなんでいたんだとか。

実家の酒蔵に戻ってからも都内にマンションの一室を活動拠点として確保し、
冬場の酒造りの時期も頻繁に上京して営業活動?に余念がありません。そんな
東海林社長とある利き酒会で知り合ってから、ちょくちょく一緒に飲みに行く
ようになり、気がついたら60カ月連続で毎月飲み会に同席するという金字塔?を
打ち立てました。もっとも 最後のほうは、2人とも記録を続けるために意地に
なって予定を合わせていましたが(笑)。

この5年の間に日本酒を大事に扱う店をたくさん教えてもらい、日本酒を熱く愛する
人々との交流が始まったのが店を始めるきっかけになりましたし、今でも自分の
大事な財産になっています。もちろん「夢心」「奈良萬」という酒の大ファンに
なりました。米も酵母も水も全て福島県産にこだわったその酒は、決して派手さは
ないものの飲み疲れせず、食事の邪魔をしないほっと落ち着く味わいで、当店でも
じわじわファンが増えてきています。

先日、念願だった「奈良萬を楽しむ会」を開催しましたが、1人当たり5合近く
用意した酒が全て飲み尽くされたのが、その旨さを雄弁に物語っていました。
実はいつも奈良萬を配達してくれる両国の酒販店「西彦商店」の若旦那も、
東海林さんとは別の大学でラクロスをやっていたライバル同士だったとか。
日本酒の世界は本当に狭いですね。

「夢心」の樽酒を開店記念に振る舞ったのが去年の5月。間もなく開店1周年を
迎えます。お客さんから「記念行事は何かやるの?」と聞かれることも多く
なってきました。今考えているのは5月21日、22日の土日に「角打ち酔香」を
オープンさせる案です。

椅子を取っ払い、出入り自由でお任せの酒肴と厳選した日本酒を 楽しんで
もらったらどうかと。開店前から店主が秘蔵していた 各蔵の最高峰の日本酒を
原価程度で飲んでもらい、売り上げを震災被害を受けた 酒蔵に寄付する
アイデアも温めています。詳細は近々店とホームページで告知しますので、
お時間がありましたら是非遊びに来てくださいね。

5月の営業のお知らせ

12 4月 2011

5月15日(日)と16日(月)は臨時休業いたします。

日本酒の会への出席や仕入れのため、5月15日(日)と16日(月)は臨時休業
させていただきます。ゴールデンウィーク中は暦どおりの営業となります。

5月の店休日は、3日(火)、9日(月)、10日(火)、15日(日)、16日(月)、
17日(火)、23日(月)、24日(火)、31日(日)となります。

被害を受けた蔵のお酒を飲んで下さい

28 3月 2011

震災から2週間以上が経ちましたが、世間の情勢は落ち着くどころかむしろ不安や混乱が
じわじわ広がっているような気がします。

会社にいても被害の復旧に追われたり受注が激減して通常業務とはほど遠い仕事を
余儀なくされたり、計画停電や交通機関の混乱、余震の影響もあって気が休まらない
日々を送っている方も多いようです。

そうした目に見えない疲労が蓄積しているためでしょうか、普段は酔った姿を見せた
ことのないお客様がわずかな酒量でしたたかに酔われたりするケースも増えてきたため、
帰宅の安全を期するため平日の閉店時間を1時間早めました。また、店の看板の照明を
消したり暖房を弱めにするなど節電にも配慮しています。皆様にはご不便をおかけ
しますがご理解いただければ幸いです。

店は通常営業を続けていますが、予約のキャンセルが増え、遠方からわざわざ当店に
来られるお客様は少なくなりました。その代わりといっては何ですが、地元のお客様の
ご来店が増えています。やはり歩いて家に帰れるという安心感があるからでしょう。
店でしばし精神的な疲れを癒していただけるよう努めさせていただいております。

オフィス街の飲食店は宴会などが激減し、経営的にかなり厳しい状況に追い込まれて
いると聞きます 。それに比べれば当店はまだ恵まれているのかもしれません。お客様に
来ていただいている間にせいぜい頑張って、売り上げの一部から義援金に回す金額を
増やしたいと思っています。

現在、宮城県、岩手県、福島県のお酒を中心に品揃えを増やしています。中には津波で
蔵が丸ごと流されたり、建物や設備に大きな損傷を受けたり、仕込みや貯蔵中のお酒を
失ったりしたところもあります。お客様にはそうしたお酒を飲んでいただくことで、
少しでも再建の手助けをしていただければ嬉しく思います。

また、今後の推移を見て新たな支援策も考えていきたいと思っていますので、ご協力の
ほど宜しくお願いいたします。

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