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飲食業の先輩方に多くを学びました

土日は3時から営業している当店には、土日が定休日の飲食店の方々がよく訪ねてこられます。
先日の日曜日も同業者の方々が3組ほど来店されました。しかも連休とあってか、遠方から
はるばる足を運ばれた方も。

お一人は九州から。福岡で7年ほど前から「缶詰バー」を経営されている方で、年齢は私の1つ下。
脱サラで店を始めたところまで一緒です。店は昭和レトロな雰囲気で、全国から集めた500種類もの
缶詰とカップ酒がウリだそうです。東京には全国の自治体が運営するアンテナショップがたくさん
あるので、変わり種の地場缶詰を探すのには好都合だとか。この日も缶詰やカップ酒をたくさん
仕入れた帰りに当店に寄ってくださいました。

今でこそ昭和レトロを売り物にする店はたくさんありますが、開店当時はまだ珍しく「半年ほどは
お客がほとんどなく、店で読書ばかりしてたましたね」と笑っていました。それでも福岡の天神と
いう飲食の激戦地で7年も店を続けてこれたのは、苦しくても店のコンセプトを曲げずに愚直に
日々の努力を続けてきたからだとか。年齢や開店の経緯が我が身に近いこともあって、うなづく
ことが多い話でした。

もうお一人は広島から。和食中心の居酒屋を2店経営されている一見コワモテ風の(失礼)オーナー
さんです。私が以前編集長をしていた飲食店経営雑誌の熱心な読者で、毎週ネットで書いていた
コラムも愛読されていたとか。知り合いの酒販店の方から「元編集長の店」と聞いて来店されたと
おっしゃるので、一気に緊張がピークに。「書いてることとやってることが全然違う!」と怒られるん
じゃないかとビクビクでした。

実際は外観に似つかず(失礼)優しい方で安心しましたが、飲食に対する思いは人一倍強く、お客様を
とことん大事にする気持ちや、徹底して店を清潔に保つ必要性などを熱く語られ、身が引き締まる
思いでした。特に印象に残った話を1つ。

ある常連さんが大切な家族の記念日にどうしてもその店でお祝いをしたいと電話をかけてきたの
ですが、あいにくその日は予約で超満席状態。泣く泣く断ったそうです。ところが、1組の予約客が
連絡もなしにドタキャンしたのです。ぽっかりと空いた席を見て、「あのお客様に入っていただけた
じゃないか!」と頭に血が上ったオーナーはドタキャンした相手にすぐに電話をかけ、「あなたの
行動は店だけでなく多くのお客様にも迷惑をかけるんだ」と滔々と諭したそうです。

当店でも何回かドタキャンの経験があり、その時の気持ちを思い出しました。「世間的に飲食業は
まだ水商売と呼ばれて見下す風潮があるのが残念」と悔しそうに語るオーナーの切実な思いが身に
迫りました。

もう1組の方々は、東京・北千住で酒徒なら誰しも店名を聞くと「ああ、あの店ね」と思い当たる
老舗店の大将と若大将、孫娘夫婦といったグループ。煮込みで有名な店と言えば思い当たる方も多い
でしょう。齢80を超す大将は、ただ座っているだけで漂う風格が違います。「お店は何年になるん
ですか?」という私の寝ぼけた質問に、「130年」と平然と答える姿に神々しささえ感じました。

開店から1年も経たずおむつを外せない我々はただこうべを垂れるばかり。先客との入れ替えが
うまくいかずにお待たせしたり、狭い補助席にお座りいただいたりといった失礼の数々もあって
冷や汗三斗の思いでしたが、最後まで優しいまなざしを注いでくださったのが救いでした。

そう。本当の大人物とは決していばったりせず、どんな人間にも謙虚であるもの。そんなことを
再認識させられました。

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