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「アル添」は悪なのでしょうか?

最近急に春めいてきたとはいえ、店ではお燗を頼まれる方がたくさんいます。少し熟成させた
純米酒をあっためて飲むと何ともいえず幸せな気分になります。そういう境地にはまって
逃れられなくなってしまったのか、最初から最後まで純米酒で通すお客様も少なくありません。

あるお店でこういうお客の話も聞きました。入店するなり「俺は純米酒しか飲まないんだけど、
純米酒は置いてる?」と聞いて、無いと知るなり踵を返して帰ってしまったそうです。そういう
“純米原理主義者”と呼べそうな人がいるのも確かで、昨日はそういう話からお客様と「アル添」に
ついて議論になりました。

大阪から上京する度に店に寄ってくださる若いお客様は「僕は吟醸でも本醸造でもこだわらず色んな
お酒を飲んでみたいので、アルコール添加にはこだわりませんよ」と言い、別の年配のお客様は
「アル添してる酒は何か悪酔いしそうなので、できるだけ純米酒を頼むようにしてるよ」と言います。
近所のワインバーの経営者は「日本酒のアルコール添加は酒質を高める目的もあり、ワインには無い
誇るべき技術」とアル添をむしろ支持する意見を述べました。

私自身はアル添であろうとなかろうと美味しいお酒だったら飲みたいと思う質なので、それほど
こだわりません。地方の居酒屋で普通酒しか置いてなくてもそれはそれで楽しめる単なる
飲ん兵衛です。日本酒へのアルコール添加は、戦時中に酒税をきっちり徴収するために腐造を防ぎ
石高を増やす特効策として広がったといいますが、実際のところそうした戦時体制の遺物である
「三増酒(アルコールで量を3倍に膨らませたような酒)」などは今ではほとんど見かけなく
なっています。

出来のいい吟醸酒や本醸造酒は、香りを高めキレを生み出すためにほんの少しアルコールを加える
だけで、どぼどぼとアルコールを加えるイメージとはほど遠いものです。「アル添酒は悪酔いする」
という話は昔に質の悪い安酒を飲んで痛い目に遭ったトラウマか、「ワインには酸化防止剤が入って
いるから悪酔いする」といった類いの間違った常識の1つだと思っています。

当店にあるお酒は8割方が純米酒なのも確かですが、美味しい吟醸酒や本醸造酒なども置いて
いますので是非お試しを。日本酒の世界の奥行きの深さを感じていただけると思います。

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9 Comments to “「アル添」は悪なのでしょうか?”

  1. 日本酒は米で造るものと習っていましたが、アル添ということを聞いてびっくり、甲類焼酎を混和しているのですね。米からできるアルコールが日本酒でしょ? 米だけでは酒が作れないと白状しているようなものでこれはちょっと八百長ではないですかね。 

  2. 「安ワインを飲まされたから翌日頭痛がして具合悪くなった・・」と言い張る知人がいて、そのことについてはワインスクールの先生から科学的にもいいがかり・・と教えていただいたこともあり、心の中で「誤解だよ・・」とつぶやいてはいたものの、日本酒については、なんとなく本醸造より純米酒と思いこんでいました。今度いろいろ試させていただくきっかけになりました。^^

  3. 醸助さま

    わざわざメールありがとうございます。酒税法上ではアルコール添加は認められているので、
    ルールの範囲内ということでは「八百長」ではないのですが、日本酒が本来の米由来以外の
    アルコールを添加していること自体、許せないというご意見は理解できます。

    純米酒が存在する以上、もちろん米だけで日本酒を造ることはできるのですが、発酵を
    調整したり味を整えたりするために少量のアルコールを添加することは許される範囲で
    あると考えています。もちろん日本酒は嗜好品ですから、できれば純米酒を飲みたい
    というのであれば、お申し出いただければお選びして飲んでいただきますのでご安心
    ください。いろんなお酒をいろんな飲み手が楽しむというのが本来の日本酒の世界だと
    思っていますのでご了承を。よろしくお願いします。

    suga

  4. JUNEさま

    ワインの場合は酸化が天敵なので、酸化防止剤を使わないと基本な品質が保てないという宿命が
    ありますので、どんな銘醸ワインでもほぼ全てのワインに酸化防止剤が使われています。
    なので、高いワインだと酔わなくて、安いワインだと悪酔いするというのは俗説にすぎないのですが、
    まあ安いワインは財布を気にせず飲み過ぎてしまうということなのでしょうね。

    当店の日本酒はあくまで純米酒を基本にしていますが、質のいい吟醸酒や本醸造酒も厳選して
    置いていますので、ぜひ試してみてください。決して悪酔いはしないはずですよ。

    suga

  5. 酔香さん、御無沙汰です。ワインの悪酔いの件ですが、昔、一升瓶の国産ワインを飲んでる途中で、酔ってもいないのに、二日酔いのような頭痛がしたことがありました。山梨のワイン醸造家にその体験を話したら、醸造技術が低くて不安定な時代には、ビンのなかで、アセトアルデヒドが生成されることがあったと言ってました。二日酔いの元の毒を飲んだのだから、即効性があったのか、と妙になっとくしましたが、もちろん、いまはそんなことはないと

  6. 難しいですねぇ。戦後の名残りで残ってる雑なお酒がちらほらあるのも良くないのかも…な気がします。丁寧に作ってある本醸造なんてとっても美味しいです。飲む方をイメージして、お酒の設計を細かく細かく作り上げ、理想の状態にするために、ほんの少量のアルコール添加。最近なんかは、酒蔵さんの日本酒を蒸留してアル添用にしたりとかもありますしね。そういうお酒は悪酔いもしにくいですから、良いです。ただ、アル添のアルコール自体に制限なくできの悪い純米にアル添して香りを立てた酒があるのも事実。そういうお酒は悪酔いしますしねぇ…。そういうのがなくなっていけば、アル添されているお酒もお酒足りえるようになるのかも。
    日本酒と清酒は違う。と、とある蔵元さんで伺ったことがあります。日本酒は、戦前から造られていた、米だけの酒であるべき。清酒は、美しい酒。アルコール添加して、今までにない透明感を持たせた酒。
    どちらが正しいわけでもないけど、区別はしたい。そんな感じだったような。
    と、若輩者がすいません。なんとなく気になったので、〆。
    失礼しました。

  7. ブーさま

    どうもご無沙汰しております。
    私も貧乏な学生時代にお銚子1本100円という怪しげな日本酒をしこたま
    飲んでひどい目に遭ったことが何度もあります(学習しないもんで…)。

    店でもお客さんの酔い具合を見て途中でストップをかけることもありますが、
    やはりあまり体に負担をかけないで、年とってもずっと飲み続けられたら
    いいですね。お互い頑張りましょう。

    suga

  8. 遊さま

    コメントありがとうございます。蔵によっては社長が純米酒を造ろうとしても、
    ベテランの杜氏が今までとやり方を変えるのが不安になって、こっそりアルコールを
    入れることもあるといいますから、根が深い問題ですね。

    遊さんがおっしゃるとおりきちんと区別すればいいのですが、「本醸造酒」には
    アルコールを添加しているということを知らない消費者もたくさんいます。
    もっとわかりやすい表記や基準を作って安心させてほしいものです。
    お酒は嗜好品ではありますが口に入るものですし、ね。

    suga

  9. 通りすがり

    アル添で検索してたどり着きました。
    僕はアル添なんて言葉も知らなかった時に知り合いの造り酒屋さんでアルコール添加の歴史と意味を聞きながら
    ものすごく美味しい日本酒を頂いたことがあり、特に悪い印象も持っていなかったのですが、
    この前とある観光地の造り酒屋さんで生酒をいただき、
    それがものすごくアルコール臭かった(そしてクラクラするくらいまずかった)
    ので、どっちもどっちだなと思ってます。
    たぶん、その観光地の造り酒屋さんは、生酒をおみやげ用に日持ちするように
    「香りを高めキレを生み出す」ための量を超えてアル添していたのではないか、と思ってます。
    あくまで推測ですけれど、でもそういうものもあるのならアル添を嫌う人がいてもおかしくないな、と思ってます。
    ちなみにラベルを見せてもらいましたが、醸造アルコールの文字は確認できました。
    それと、度数もやや高めでした。

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