2升入り菰樽を店内にずらりと陳列中です

29 6月 2010

開店からようやく1カ月が経ちました。思った以上にたくさんの方々にご来店いただき、忙しいながら
嬉しい気持ちでいっぱいです。
お酒も料理も開店時とはかなり入れ替わっておりまますので、最初の頃にいらしたお客様には
是非もう一度ご来店いただければ 幸いです(ブログで逐一更新せずすみません)。

昨日と本日は、連休をいただきました。
せっかくの連休なのだからどこか遠くに出掛けたらいいのかなとも思いますが、
結局店のことが頭を離れず酒販店巡りをしてしまいました(笑)。その甲斐もあって、
品切れでご迷惑をおかけしたお酒も入荷しましたので、よろしければご注文ください。
日本酒が重たく感じられる夏に、すいすい飲めるような「夏吟」も多く取り揃えてますよ。

料理のほうも少しずつ夏にを意識した食材をご用意しております。
まだまだ発展途上ですが、ちょっとずつ進歩していけるよう、料理担当の智子ともども頑張ります。
土日は午後3時から昼酒営業をしておりますが、東京スカイツリー見物のついでに生ビールの1杯でも
飲みに来られる観光客も増えてきました。
それに合わせて、新たに昼酒セットを考えようかと思っております。

開店間もないにもかかわらず、多くの蔵元さんにもご来店いただきました。
今、店内の中央の棚上に2升(3.6リットル)入りの菰樽を飾っています。
ほとんどの樽に中身が入っていますので、これから順番にローテーションを決めて開け、
お客様にお出ししようと思っています。空き樽はそのまま展示しますので、 このブログをご覧の
蔵元さんの中で、2升樽を作っていらっしゃるところがあればご連絡ください。
責任をもって展示させていただきます。

7月は久々に日本酒の会にも参加しますので、11日(日)、12日(月)、13日(火)と
連休をいただきます。加えて26日(月)にも臨時休業します。ご了承ください。

十間橋通り商店街を歩いてみて下さい

8 6月 2010

酒庵酔香が店を構える十間橋通り商店街は、大正時代からの歴史を刻む歴史ある商店街です。
東京の下町にしては珍しく戦災を免れた一角もあり、古い長屋や商店建築がけっこう残っています。
かつてはすれ違う買い物客と肩をぶつけるぐらい大いに賑わったと聞きますが、今はシャッターを
閉ざしたままの店も多く、昔日の繁栄の跡を偲ぶことさえ難しくなっています。

とは言え、かつての商業地としての記憶や誇りといったものが、地元住民の間にそこはかとなく
残っているのも確かで、同じ商店街で商売を営んでいる方にお話を伺うと、それぞれの思いで
地元を愛していることがわかります。自分たちもその歴史的な系譜の一番端っこに連なったわけ
ですが、今は商売を軌道に乗せることで精一杯なものの、いつかこの街や商店街のお役に立てる
ようになりたいと願っています。

当店のすぐ近くにある「長屋茶房 天真庵」は築60年の長屋を改装したカフェですが、庵主の
野村さんは私の大学の先輩で、その縁があったからこそこの地に店を開くことになったと言っても
過言ではありません。天真庵では音楽ライブをはじめ、書道や華道、さらにはかっぽれに至るまで
様々な教室が開かれ、さながら文化サロンのような拠点になっています。こうしたイベントを通じて
地元に住み始めた音楽家や芸術家たちの交流も広がっており、店ができる地域活性化のモデルケースに
なっています。

野村さんはまた、蕎麦打ち名人として知られる「達磨 雪花山房」の高橋邦弘さんから蕎麦打ちを
習い、今も毎早朝に清々しい蕎麦を打ってお店で供しています。私も野村さんから教えを乞い、
蕎麦打ちの真似事のようなことは出来るようになりましたが、まだまだお客様にお出しするレベルに
達せず、未だ修業中を標榜する不肖の弟子です。地元への貢献も何もかも道半ばですが、一歩ずつ
前に向かって歩いていけたらと思っています。

ご近所のお客様のご来店が増えてきました

1 6月 2010

昨日、また1つ歳を重ねてしまいました。昨年の誕生日には、今頃店を始めているとは思いも
しなかっただけに、人生というのはちょっとしたきっかけで動くものなんだなあと、改めて
感じました。女将の智子も開店に合わせて会社を辞めて汗まみれで厨房に立っています。
こちらも「人生転換組」の1人です。

5月中は実に様々なお客様にご来店いただきました。前の職場の同僚や仕事の関係者、蔵元さん、
酒販店さん、同業の飲食店の同志たち、昔からの飲み友達、お酒好きのブロガーの方々、
ご近所にお住まいの方々などなど、こんな不便な場所にある小さな店によく来てくださるなあと、
戸惑いながらも感激しきりでした。一方で、わざわざお越しいただいたのに満席で入店をお断り
することもしばしばあり、 心苦しい思いもしています。お手数ですが、ご来店前にご一報
いただければ幸いです。

嬉しいのは地元の方々が少しずつ増えていることです。「工事中からどんな店ができるか
気になっていたのよ」とおっしゃって様子見に来られた女性客。「日本酒が好きなんだけど、
このへんにはいい店がなくてねえ」と 来店された男性客。「あまり日本酒は得意じゃなんだけど、
自分でも飲めるお酒があったら教えてくれる」と来られた若い男性客。「日本酒大好き!」と
言って濃いめのお酒をくいくい飲んでいかれた2人連れの女性客。それぞれの要望をお聞きしながら
お酒を提供する楽しさが少しづつ感じられるようになってきました。もっと努力して、地元でも
愛される店を目指していきたいと思います。

こうして多くの皆様にご来店いただいたため、思った以上にお酒や食材が出てしまいました。
さらなるバージョンアップを図るべく、6月は14日(月)と28日(月)の2日ほど臨時休業を
いただき、仕入れや勉強の時間に充てさせていただければと思います。ご容赦ください。
これからも初心を忘れず、カウンターの内側から皆様に日本酒の魅力を伝えるべく頑張ります
ので、引き続きのご愛顧よろしくお願いいたします。

よたよたふらふらなスタートです

25 5月 2010

酒庵 酔香」は、5月21日の大安吉日にオープンしました。

おかげさまで多くの開店祝いのお花をいただき、店の玄関周りはさしずめ 花屋のような
様相を呈しました。改めて多くの方々に支えられて開店にこぎ着けられたことを再認識
いたしました。本当にありがとうございます。

ご来店いただいた方々には、店内のあちこちに残る古い酒屋さんの風情を楽しんで
いただけたようで嬉しかったのですが、カウンターや厨房の中にいる我々はすっかり
舞い上がっていて、ぎこちない動きが失笑を買っていたのではないかと思います。

注文忘れや取り違い、おしぼりや箸の出し忘れ、お燗をつけっぱなしにするなど、
冷や汗ものの数日間でした。初めての飲食業の立ち仕事とあって、初日や2日目は
仕事が終わった後に食事をとる余力もなく、そのまま布団に倒れ込んでいました。
この仕事を何十年も続けているプロの 方々の偉大さに改めて頭の下がる思いでした。

土日の昼酒営業もこなして今日は初めての定休日ですが、ゆっくり寝る間もなく
これまでの反省を踏まえてオペレーションの見直しやメニューの再検討をして、
食材の買い出しなどに走り回っていました。

お客様の中には居酒屋のようにしっかりした食事を求められる方もいますが、
あくまで日本酒バーとして、お酒を引き立てる酒肴を中心としたメニューしか
お出しできませんので、あらかじめご容赦ください(「お酒に寄り添う手作り料理」
ご参照ください)。

また、カウンター8席を中心とした小さなお店ですので、事前にご一報いただければ
幸いです。この数日間、せっかく遠方よりお越しいただいたのに満席でお断りする
ことがしばしばあり、心苦しい思いをしていますので、どうぞよろしくお願いします。

オープン記念情報

18 5月 2010

今週になって酒販店さんや蔵元さんにお願いしていたお酒も続々届き始め、ヒューガルデンの
生ビールを提供するサーバーも設置されました。酒屋さん時代の古い棚には100本を超える
酒瓶が並べられ、結構壮観です。店内にあるお酒は基本的にどれも飲んでいただけますので、
宝探し気分で見ていただければと思います。

遅れていた杉玉掛けや暖簾掛けの工事も明日には終わりますので、店という器はあらかた
完成しましたが、問題は店の切り回しなどソフトの部分。お酒の提供の仕方、料理のメニュー
などはほぼ手探りの状態です。脱サラ居酒屋ゆえプロの方々から見れば噴飯ものの事態も
大いに懸念されるところです。お酒も料理もオープン後しばらくはメニュー数を絞って
提供させていただくことをご容赦ください。

その代わりと言っては何ですが、「最新情報」のコーナーにも書きましたように、
樽酒の振る舞いや特別価格の生ビールなども用意しました。また、まだお客様にお出しする
レベルではないものの、店主が四苦八苦して打った蕎麦も無理矢理食べていただくかも
しれません。

このところ晴天続きで、店の近くの十間橋では朝から「逆さツリー」を見物する人たちで
賑わっています。店の前に開店案内ハガキを置いてあるのですが、スカイツリー見物の
ついでに持って帰る人たちが結構いて、新しい人の流れができつつあることが実感されます。
もっとも夜になれば商店街の人影はめっきり少なくなりますので、過剰な期待は禁物だと
自戒していますが、店のオープンとともに街がどう変わっていくかを見ることができるのも
楽しみの1つです。

いよいよ開店まで秒読みとなりました

13 5月 2010

 

ずっとパソコンが不調で、このブログの更新が滞ってしまっているうちに、開店まで
1週間といよいよ秒読みが始まってしまいました。夜寝る前に「あ、あれもやってない、
これもやってない」と突然思い出すことが多く、かなり焦っています。以前、飲食店経営を
テーマにした雑誌の編集をやっていましたが、聞くのと実際にやるのは大違いですね。
当たり前のことを改めて痛感しています。

先日、秋田に帰省した折に、実家で昔使っていた宴会用の器が入った箱を蔵の奥から
引っ張り出しました。箱の中からは、漆塗りのお膳や汁椀、素朴な柄の銚子、猪口、皿、
湯呑みなど、時代がかった品々がたくさん出てきました。昔の宴会は家の座敷で開かれ
ましたので、各家が一通りこうした器を揃えていたわけですが、今は出番もなく埃をかぶって
いるばかり。酒席の盛り上がりを支えた器たちにもう一度活躍の場を与えてやりたくて、
大きな木箱で5箱くらいにもなるそれらを全て送ってもらいました。これから比較的状態の
いいものを選び、よく洗って店の食器として生き返らせます。

近頃は100円ショップに行っても結構立派な食器が買えますが、道具を消耗品扱いせずに
大事に使い込む日本の文化を見直すきっかけになればと思っています。もっとも、店で使う
食器全てが骨董というわけではなく、今の日本酒の酒質を十全に引き出す形状の器を考え、
特別に現代の陶芸家に焼いていただいたオリジナルの酒盃も用意しています。こうした器が
次代のスタンダードになればいいな、という思いも密かに抱いています。

このほかにも、カウンター材はウイスキーの貯蔵樽などで使われるホワイトオーク、のれんは
酒の絞りに使われる厚手の木綿生地を柿渋染めにしてもらいました。こだわりというには、
かなり独りよがりな店ですが、自己満足の世界を笑って楽しんでいただければ幸いです。
自分たちが楽しくないとお客様も楽しめない。そんな気持ちでぼちぼちと始めさせて
いただきますので、皆様もおおらかな心を携えてご来店を。

ヘレンケラーのようなスタートです

28 4月 2010

私が会社を辞めて店を始めると聞いた周囲の人たちの反応は、ほぼ2つに分かれました。
「うらやましい」といった肯定的な声と、「大丈夫なの」と心配する声でした。
前者は、私が酒好きでいつも飲んだくれているのを知っているか、自分も何か商売を
やりたいと考えている人たち で、後者は、商売の厳しさを知っているプロの人たちです。

出版業界は長期的な不況に苦しんでいますが、会社にしがみついていれば少なくとも定年までは
世間よりも高い給与をもらい続けることは可能でしょう。そうした経済的な後ろ盾を捨てて、
50歳になってからわざわざ『水商売」に身を投じるのは、飲食業の実情を知る人たちにとって
軽卒そのものの行動に見えたのかもしれません。

出版社では、主に経営や経済のテーマを扱う雑誌を作っていました。取材記者として「競争」とか
「効率化」とか「グローバル化」などをキーワードに記事を書いてきましたが、 ここ5〜6年ほど
心の中にもやもやしたものを抱え続け、それがリーマンショックなどを機に大きく膨らむのを
感じていました。一言でいえば「経済は日本人を本当に幸せにしたのか」という疑問です。

まあそういう疑問を感じる時点で、大した記者ではなかったことを告白するようなものですが、
ともかく、そういう経済効率優先の世界とは全く違った分野に挑戦したくなったのです。
押上という土地を選んだのも、店のすぐ近くで大学の先輩が古い長屋を改装したカフェを
経営していることもありますが、長い間開発から取り残された“しみったれた”街の雰囲気に、
妙な安らぎを感じたからです。

そうした何十年か時計の針を戻したような街で始める店は、業種が生産性の低い飲食業、
扱う商品が衰退産業の日本酒、立地は 下町のシャッター商店街という、三重苦の環境の中に
あります。まさにヘレンケラーの苦労そのものを克服しながら店の切り盛りをしていく
覚悟です。 経済的には歯牙にもかからないような環境の中から、本当の人間の幸せを
みつけられないか。それが、店を始めながら迎える老後の楽しみなのです。


店名の「酔香」は京都にルーツがあります

23 4月 2010

お店を開くことを考えた時に、店名は最初から頭の中にありました。それは、私が学生時代を
過ごした街、京都にあった名居酒屋を目標にしたいと思っていたからです。

京都市の西郊 、酒造の神様として知られる松尾大社のすぐ近くにその店はありました。近くで
酒販店を営むご主人が夜はカウンターの中に入り、軽妙な語り口で酒の魅力を伝えるとともに、
出汁の味をしっかりと利かせた絶妙な酒肴を供する店でした。酒専用の大型冷蔵庫が温度帯別に
3台も用意され、お酒ごとの飲み頃にぴったりと合わせて勧めてくれました。

しかも、ただお酒を売るだけではなく、蔵元に入り込んで酒造りにも参画していました。
滋賀県のある蔵で高齢の杜氏が引退し、若い兄弟だけで酒造りを強いられる状況になると、
その兄弟と一緒に泊まり込んで仕込みを手伝うなど、関西の若い蔵元にとって「兄貴」のような
存在になっていました。客である我々は、マスターがそうした蔵から一升瓶に汲んできたばかりの
搾りたてにありつくのが楽しみで店に通い詰めていました。

東京から関西出張や京都旅行の度にその店を訪ね、時間ギリギリまで飲み続けたために、
新幹線の最終便に乗り遅れそうになることもしばしばでした。場所柄、酒の神である松尾様に
祝福されたような店だったといえるでしょう。私が日本一の居酒屋だと思っていたその店
「酔香」は、事情があって5年ほど前に閉店してしまいました。

今回、自分が店を開くうえで、最終的にはこの店に一歩でも近づきたいという思いが強く、
京都まで行ってマスターに「酔香」の名前を使わせて欲しいと頼みました。幸いにも
マスターには快諾していただきましたが、まだまだ草庵のような粗末な店なので、
その上に「酒庵」を付けて店名とすることにしました。

これから少しづつ努力し、日本一は無理でも、少なくともマスターに「名前を返せ」と
言われないような店になるよう頑張っていきたいと思っています。

酒庵「酔香」2010年5月21日のオープン予定です

20 4月 2010

お店の開業準備のため墨田区に引っ越してきてから、
時々隅田川沿いの散策コースを走っています。
立ち仕事に耐え得る体力作りのためという目的はもちろんですが、
これからの後半生を過ごす
街の魅力を1つでも多くみつけたいと願ってのことです。

身を切るような冷たい風もいつしか優しく頬をなぜるようになり、
一面の満開の桜が頭上を覆い尽くす中を走り抜ける心地良さに、
身も心も躍る気持ちを味わいました。その桜も散った今は、
一斉に芽吹いた木々が濃淡の違う緑の重なりを織りなしています。

昨年末で出版社を退職し、4カ月ほどの日々を経る間に、
自然は着実に季節の装いを変えました。

もう背広を着る機会も少なくなるだろうと、100本近いネクタイを捨てて
サラリーマン生活から訣別し、ひたすら店の開業に向けて準備を進めてきました。
会社という拠り所を失った不安に満ちた日々を支えてくれたのは、
決して後戻りすることなく時を刻む自然の営みであったような気がします。

そして今、やっと開店のめどが見えてきました。
昭和30年代に建てられた木造建築は思った以上に傷みが進んでいて、
耐震補強を含めた見えない部分の手入れに思わぬ負担を強いられました。
また、内装は古い酒屋さんの雰囲気をできるだけ残すことにこだわり、
店内にぐるりと巡らされた陳列棚をいったん外して再び組み直すという
パズルのような作業にも手間どりました。
しかし、そうした苦労も隅田川のゆったりとした流れを見ているうちに、
大したことではないぞと思えるようになったことが
この街に住み始めた最大のメリットでした。

男50歳の挑戦などと力むことなく、自分がこの店を通じてお客様に伝えたいと思ったことを
素直に表現していけばいい。そうした自然体で臨むことが、
皆様にとっても居心地の良い店を作り上げる第一歩ではないか。
5月21日の開店日を控えて、今そういうことを思っています。

開店までの残り少ない日々、自らの気持ちを確認するためにも
このブログを通じて皆様に開店に至る思いや経緯を少しずつお伝えしていければ
と考えています。よろしくお付き合いください。

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