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幻の日本酒雑誌がありました

10 7月 2012

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日、三重県の伊賀上野で「三重錦」を醸す中井昌平さんが来店されました。
元プロボクサーで、廃業寸前だった蔵の酒造りという新しいリングにのぼって活躍を続けています。
一見寡黙なファイターに見える中井さんですが、話し出したら止まらない性格。
本音トーク炸裂で、周りのお客さんを巻き込んで大盛り上がりの夜となりました。

その時私は、初めて中井さんに会うきっかけとなった1冊の雑誌を思い出していました。
『日経ビジネス+(プラス)』という男性誌です。ご存知ないのは当たり前、産声を上げる前の
試作版で終わった雑誌だからです。6年ほど前のこと、そのパイロット版の編集を任された私は、
企画や取材執筆をほぼ1人でこなしました。言い方を代えれば、ほぼ100%自分の趣味で固めた
雑誌でした(笑)。

メインの特集記事は、やっぱりねえの「日本酒の逆襲ー日本人が知らない日本酒の魅力と流儀」。
「吟醸酒街道をゆく」と題して山形県の庄内地方の酒蔵を訪ねたり、「日本酒をこよなく愛する
外国人」として表紙にも登場してもらったジョン・ゴントナーさんをインタビューしたり、
全国各地の日本酒バーを紹介したりしました。もう1つの企画が「元プロボクサーが醸す酒」。
登場者は和歌山県で「雑賀」を醸す雑賀俊光さんと、そして「三重錦」の中井さんだったのです。

この時の取材では、カメラマンも元プロボクサーを起用し、さながらボクサー同士の真剣勝負の
ような臨場感溢れる写真を撮ってもらったものです。 残念ながらその記事は多くの人の目に
触れることは叶いませんでしたが、それ以来、中井さんとは親しくさせてもらっています。

ちなみに、その他の記事は「太宰治、壇一雄、坂口安吾…“弱カッコいい”男の生き方」
「ニッポンオタク列伝ー南方熊楠」「東京近代建築探偵団」「中高年から始めるジーンズと
帽子の着こなしテクニック」「大人のための知的ダイエット」「孤高伝説 ボブ・ディラン」
などなど。そうです。定年退職などで経済誌を読まなくなった中高年男性に向けた生活情報誌を
目指したのでした。

結果的には、思ったような広告収入が見込めないなどの理由で創刊には至りませんでしたが、
その時の悔しい思いが日本酒の店を始める遠因になっているのかもしれません。6年前に比べ、
日本酒を巡る環境は少しずつ変わりました。相変わらず廃業に追い込まれる蔵が絶えない一方、
代替わりで若い蔵元が新たなブランドを立ち上げ復活するケースも増えてきました。47都道府県で
唯一の空白地帯だった鹿児島県でも日本酒の醸造が始まり、海外への日本酒輸出も順調に伸びて
います。まさにかつての特集テーマ「日本酒の逆襲」が始まっているのです。

8月初め、我が故郷の秋田県酒造組合から講演の依頼がありました。県内の蔵元さんや杜氏さん
たちが集まった勉強会だそうで、店は臨時休業して出かけてきます。雑誌記者の経験と日本酒バー
の経営を通して感じたことをお話ししてこようと思います。その中でも「日本酒の逆襲」をテーマに
したいものです。かつての日本酒王国、秋田県の酒蔵復活を祈りながらー。